日本認知症学会

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岡野 栄之

慶應義塾大学 再生医療リサーチセンター
岡野 栄之

認知症の研究に関わるようになった経緯

私は40年ほど前に、分子生物学的な手法を神経研究に導入することを目指して、神経発生の研究からキャリアをスタートしました。当時、神経発生の分野では分子生物学的手法を取り入れる研究室はほとんどなく、私は「世界で初めて」という確信のもと、研究を進めることができました。1998年に私たちの研究室で、RNA結合タンパク質MUSASHIを用いて、成人脳における神経幹細胞の発見に成功したことが、大きな転機となりました。これにより、幹細胞技術を用いた神経再生研究に進むきっかけが生まれ、最初のターゲットとして脊髄損傷の再生医療を目指しました。現在では、脊髄損傷の臨床試験も順調に進み、実用化が視野に入っています。次の挑戦として、認知症治療の可能性を探る基礎研究を行っています。

研究や臨床で大切にしていること、今後の医療や研究への期待

認知症は多様で複雑な病態を持つ疾患であり、治療の道は決して平坦ではありませんが、その根本的な理解が進めば、画期的な治療法の開発に繋がると確信しています。私の研究モットーは「基礎研究から臨床応用へ」、「希少疾患から一般疾患へ」、そして「臨床応用から基礎研究へのフィードバック」という三つの柱に基づいています。難病の治療に向けた挑戦は、認知症のようなアンメット・メディカル・ニーズに対しても、バイオテクノロジーの進展が希望の光をもたらします。蛋白質製剤や抗体医薬、遺伝子治療、さらには再生医療が次々と登場し、これらの技術が認知症治療の新たな可能性を開くと期待しています。

若手へのメッセージ

若い皆さんには、無限のチャンスが広がっています。限りなく高い目標を掲げ、その達成に向けて最高のチームを築いてください。医学は常に人類に貢献し続け、科学は不治の病に勝利するという信念を持って、未来を切り拓いてほしいと思います。認知症治療の未来は、皆さんの手にかかっています。