介護関係情報
介護保険制度とは
高齢化の進展に伴い,介護を要する高齢者が増加したこと,核家族化によって介護する家族の力が弱まってきたことなどを背景に,1997(平成9)年12月に介護保険法が成立し,2000(平成12)年4月より介護保険制度がはじまりました.
介護保険制度とは,加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態になった人々が,尊厳を保持し,その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよう,①自立支援,②利用者本位,③社会保険方式という3つの基本的考え方の下で,必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行い,高齢者の介護を社会全体で支え合うことをめざした制度です(図1).
介護保険制度の仕組み
(1) 保険者
介護保険制度の保険者は,サービスの地域性,老人保健・福祉事業の実績,地方分権の流れを踏まえ,最も身近な行政単位である市町村が担っています.この点が医療保険とは大きく異なるところであり,これによって権限と財源が市町村に移譲され,市町村が決意さえすれば介護保険制度の下で独自の地域ケアシステムを構築することができるようになっています.
(2) 被保険者
被保険者は,第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳以上65歳未満)に区分され,受給権者は,第1号被保険者では要介護状態または要支援状態にあると判断された者,第2号被保険者では,「特定疾病」(老化に起因する疾病)(表1)に罹患し,要介護状態または要支援状態にあると判断された者とされています.保険料は,第1号被保険者の場合には,所得段階別定額保険料(低所得者の負担軽減あり)を市町村が徴収し(特別徴収または普通徴収),第2号被保険者の場合には,医療保険者が医療保険料と一緒に徴収します.
(3) 要介護認定
要介護認定は,介護の必要量を全国一律の基準で客観的に判定する仕組みです.申請からサービスの利用に至るまでの流れを図2に示します.利用者は市町村窓口に申請し,認定調査員等による心身の状況に関する調査を受けるとともに,医療機関で主治医意見書を作成し,これらに基づいてコンピューターによる判定が行われます(一次判定).介護認定審査会(学識経験者による審査会)は,一次判定結果,訪問調査の際の特記事項,主治医意見書に基づいて,要介護の判定(二次判定)を行います.この結果に基づき,市区町村が要介護度認定を行い,原則30日以内に申請者に結果を通知します.
(4) サービス計画書の作成
介護(介護予防)サービスを利用するには,介護(介護予防)サービス計画書(ケアプラン)の作成が必要になります.ケアプランは自ら作成することもできますが,居宅介護支援員(ケアマネジャー)に依頼して作成してもらうこともできます.要支援1~要支援2の場合には地域包括支援センターに相談して介護予防サービス計画書を作成し,要介護1以上の場合は市区町村の指定を受けた居宅介護支援事業者に介護サービス計画書の作成を依頼します(図2).
(5) サービスの利用と給付
介護保険サービスには「介護給付を行うサービス」と「予防給付を行うサービス」があり,それぞれについて「都道府県・政令市・中核市が指定・監督を行うサービス」と「市町村が指定・監督を行うサービス」があります(表2).要介護者(要介護1~要介護5の認定を受けた者)は,居宅介護支援,居宅介護サービス,居宅介護住宅改修,地域密着型介護サービス,施設サービスを利用した時に介護給付を受けることができます.要支援者(要支援1~要支援2の認定を受けた者)は,要介護状態の発生予防を目的に,介護予防支援,介護予防サービス,介護予防住宅改修,地域密着型介護予防サービスを利用した時に予防給付を受けることができます.但し,居住費と食費については,在宅と施設の利用者負担の公平性,介護保険と年金給付の調整の観点から,保険給付の対象外とされています.
(6) 介護報酬の流れ
サービス事業者が利用者にサービスを提供した場合,その対価として事業者に支払われるサービス費用のことを「介護報酬」と言います.介護報酬の基本額はサービス毎に設定されており,各サービスの基本的なサービス提供に係る費用に加えて,各事業所のサービス提供体制や利用者の状況等に応じて加算・減算される仕組みとなっています.被保険者(要介護者または要支援者)がサービスを利用した場合,原則として介護報酬の1割分(所得に応じて2割・3割分)は被保険者が負担しますが,残る9割分(所得に応じて8割・7割分)はサービス事業者が保険者(市町村)に請求し,保険者が介護給付費または予防給付費としてサービス事業者に支払います(図3).尚,介護報酬の基本額は,厚生労働大臣が社会保障審議会(介護保険給付費分科会)の意見を聞いて定めることとされており,3年毎に改定が行われています.
(7) 介護保険財政
介護保険の総費用は年々増加しており,介護保険制度が導入された2000年度から第8期介護保険事業計画がはじまる2022(令和4)年度までの間に3.6兆円から11.2兆円,第1号被保険者が支払う保険料の全国平均(月額・加重平均)は2,911円から6,014円に増加しています.
介護保険給付費の財源は,公費(税金)が50%,保険料が50%で,公費の内訳は,施設給付費の場合は国20%,都道府県17.5%,市町村12.5%,居宅給付費の場合は国25%,都道府県12.5%,区市町村12.5%です(国費の5%分は,市町村間の財政力の格差調整のためにあてられる).市町村に対する財政面の支援として,都道府県に「財政安定化基金」を置き(財源は,国,都道府県,第1号保険料が1/3ずつ),見通しを上回る給付費の増加や通常の徴収努力を行ってもなお生じる保険料の未納による保険財政の赤字を一時的に補填するための資金として貸与・交付されます(図4).
(8) 地域支援事業
被保険者が要介護状態等となることを予防するとともに,要介護状態等となった場合においても,可能な限り地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援するために,2005(平成17)年の介護保険法改正において「地域支援事業」が創設されました.地域支援事業は,市町村が実施主体となって実施する事業であり,介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業),包括的支援事業(地域包括支援センターの運営,在宅医療・介護連携推進事業,認知症総合支援事業,生活支援体制整備事業),任意事業(介護給付等費用適正化事業,家族介護支援事業,その他の事業)で構成されています(図5).認知症総合支援事業については,「4.認知症総合支援事業」で詳しく説明します.
介護給付の対象となるサービス
(1) 居宅介護サービス
居宅(自宅以外にも,老人福祉法で規定される養護老人ホーム,軽費老人ホーム,有料老人ホームを含む)の要介護者に対して提供されるサービスです.
1) 訪問介護(ホームヘルプサービス)
訪問介護員(ホームヘルパー)が,要介護者の居宅を訪問して,入浴,排せつ,食事等の介護,調理・洗濯・掃除等の家事,生活等に関する相談・助言,その他の必要な日常生活上の世話を行うサービスです.
2) 訪問入浴介護
入浴車等により要介護者の居宅を訪問し,浴槽を提供して入浴の介護を行うサービスです.
3) 訪問看護
病状が安定期にあり,主治医が必要と認めた居宅の要介護者について,病院,診療所または訪問看護ステーションの看護師,准看護士,保健師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士が居宅を訪問して療養上の世話または必要な診療の補助を行うサービスです.
4) 訪問リハビリテーション
病状が安定期にあり,計画的な医学的管理の下におけるリハビリテーションを要すると主治医が認めた要介護者について,病院,診療所または介護老人保健施設の理学療法士または作業療法士が居宅を訪問して,心身の機能の維持回復を図り,日常生活の自立を助けるために,理学療法,作業療法等の必要なリハビリテーションを行うサービスです.
5) 居宅療養管理指導
通院が困難な居宅の要介護者について,病院,診療所または薬局の医師,歯科医師,薬剤師等が,居宅を訪問して,心身の状況や環境等を把握し,それらを踏まえて療養上の管理および指導を行うサービスです.
6) 通所介護(デイサービス)
居宅の要介護者を老人デイサービスセンター等に通所させ,入浴,排せつ,食事等の介護,生活等に関する相談・助言,健康状態の確認,その他の必要な日常生活上の世話および機能訓練を行うサービスです.
7) 通所リハビリテーション(デイ・ケア)
病状が安定期にあり,計画的な医学的管理の下におけるリハビリテーションを要すると主治医が認めた居宅の要介護者について,介護老人保健施設,病院または診療所に通所させ,心身の機能の維持回復を図り,日常生活の自立を助けるために必要なリハビリテーションを行うサービスです.
8) 短期入所生活介護(ショートステイ)
居宅の要介護者を老人短期入所施設,特別養護老人ホーム等に短期間入所させ,その施設で,入浴,排せつ,食事等の介護,その他の日常生活上の世話および機能訓練を行うサービスです.尚,緊急時の円滑な受け入れを促進するために,2012(平成24)年の介護報酬改定において,一定割合の空床を確保している事業所の体制に対する緊急短期入所体制確保加算,緊急時の受入に対する緊急短期入所受入加算が設けられています.
9) 短期入所療養介護(ショートステイ)
病状が安定期にあり,短期入所による医療を要すると判断される居宅の要介護者を,介護老人保健施設,介護療養型医療施設等に短期間入所させ,その施設で,看護,医学的管理下における介護,機能訓練,その他必要な医療や日常生活上の世話を行うサービスです.尚,緊急時の円滑な受け入れを促進するために,2012(平成24)年の介護報酬改定において,緊急時の受入に対する緊急短期入所受入加算が設けられています.
10) 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム)
特定施設(有料老人ホーム,軽費老人ホーム,厚生労働大臣が定める基準に適合するものとして都道府県知事に届けられている高齢者専用賃貸住宅)に入所している要介護者等について,その施設で提供するサービスの内容,担当者,要介護者の健康上及び生活上の問題点,解決すべき課題,提供するサービスの目標及びその達成時期,サービスを提供する上での留意事項を記載したサービス計画に基づき,入浴,排せつ,食事等の介護,生活等に関する相談・助言,その他の日常生活上の世話,機能訓練および療養上の世話を行うサービスです.
11) 福祉用具貸与居宅
居宅の要介護者に対して,福祉用具(心身の機能が低下し,日常生活を営むのに支障がある要介護者等の日常生活上の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練のための用具であって,要介護者等の日常生活の自立を助けるためのもの)のうち厚生労働大臣が定めるものを貸与するサービスです.
12) 特定福祉用具販売
前期の福祉用具のうち,入浴や排せつのための福祉用具,その他の厚生労働大臣が定める福祉用具の販売を行うサービスです.
(2) 地域密着型介護サービス
住み慣れた地域において,地域の特性に応じた多様なサービスの提供が可能となるように,2005(平成17年)の介護保険法改正において創設されたサービスです.このサービスの特徴は,①指定権限が市町村に移譲されており,その市町村の住民のみがサービスを利用できること(但し,事業者が所在する市町村の同意を得た上で他の市町村が指定すれば,他の市町村の住民も利用することができる),②市町村(およびそれをさらに細かく分けた圏域)単位で必要整備量を定めることで,地域のニーズに応じたバランスの取れた整備が促進されること,③地域の実情に応じた指定基準,介護報酬を定めることができること,④指定(拒否),指定基準,報酬設定に,地域住民,高齢者,経営者,保健・医療・福祉関係者等が関与することによって公平・公正透明性が担保されていることにあります.
1) 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
2011(平成23)年の介護保険法改正において,地域密着型サービスに新たに追加されたサービスです.日中・夜間を通じて1日複数回の定期訪問と随時の対応を介護・看護が一体的にまたは密接に連携しながら提供するサービスで,利用者の介護・看護ニーズに24時間対応することによって中重度者の在宅生活を支える役割を果たすことが期待されています(図6).以下の2つの類型が定義されています.
① 1つの事業所で訪問介護と訪問看護のサービスを一体的に提供する「一体型事業所」
② 事業所が地域の訪問看護事業所と連携をしてサービスを提供する「連携型事業所」
2) 夜間対応型訪問介護
居宅の要介護者に対し,夜間において,定期的な巡回訪問や通報により利用者の居宅を訪問し,介護福祉士等が,入浴,排せつ,食事等の介護や,その他の日常生活上の世話を行うサービスです.
3) 地域密着型通所介護(小規模デイサービス)
利用定員19人未満のデイサービスセンターにおいて,居宅の要介護者が,可能な限りその居宅において,その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,生活機能の維持又は向上を目指し,必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより,社会的孤立感の解消及び心身機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的介護負担の軽減を図ることを目的とするサービスです.
4) 認知症対応型通所介護
認知症である居宅の要介護者に対し,特別養護老人ホームまたは老人デイサービスセンターに通所し,当該施設において入浴,排せつ,食事等の介護,その他の日常生活上の世話,機能訓練を行うサービスです.
5) 小規模多機能型居宅介護
居宅の要介護者に対し,その人の心身の状況やその人が置かれている環境等に応じて,その人の選択に基づいて,居宅または事業所で,入浴,排せつ,食事等の介護,その他の日常生活上の世話,機能訓練を行うサービスです.利用者は「通い」を中心にして,様態や希望に応じて随時「訪問」や「泊まり」を組み合わせることができるので,中重度になっても在宅での生活が継続できるようになります(図7).事業所においても,人員配置は固定にせず,柔軟な業務遂行が可能になるように配慮されているため,どのサービスを利用しても馴染みの職員によるサービスを受けることができます.また,グループホーム,小規模の介護専用型特定施設(有料老人ホーム),小規模介護老人福祉施設,有床診療所(介護療養型医療施設)を併設することによって,居住系のサービスと連続的一体的なサービス提供も可能となります.
6) 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症である居宅の要介護者に対し,共同生活を営むべく住居において,家庭的な環境と地域住民との交流の下で,入浴,排せつ,食事等の介護,その他の日常生活上の世話,機能訓練を行うサービスです(図8).
7) 地域密着型特定施設入居者生活介護
定員29人以下の小規模の介護専用型特定施設(入居者が要介護者,その配偶者等に限られる有料老人ホーム等)に入所・入居する要介護者に対し,地域密着型特定施設サービス計画に基づき,入所,排せつ,食事等の介護,その他の日常生活上の世話,機能訓練および療養上の世話を行うサービスです.
8) 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
定員29人以下の小規模の特別養護老人ホームに入所する要介護者に対して,地域密着型施設サービス計画(地域密着型介護老人福祉施設に入所している要介護者に対して,当該施設が提供しているサービスの内容,担当者,その他厚生労働省令で定める事項を定めた計画)に基づき,可能な限り,居宅における生活への復帰を念頭において,入浴,排せつ,食事等の介護,その他の日常生活上の世話,機能訓練,健康管理,療養上の世話を行うサービスです.
9) 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
2011(平成23)年の介護保険法改正において,地域密着型サービスに新たに追加されたサービスです.居宅の要介護者に対して,居宅サービス9種類(訪問介護,訪問入浴介護,訪問看護,訪問リハビリテーション,居宅療養管理指導,通所介護,通所リハビリテーション,短期入所生活介護,短期入所療養介護),地域密着型サービス4種類(定期巡回・随時対応型訪問介護看護,夜間対応型訪問介護,認知症対応型通所介護,小規模体機能型居宅介護)のなかから2種類以上組み合わせて提供されるサービスのうち,「訪問看護」と「小規模多機能型居宅介護」を組み合わせたサービスです(その他これとともに一体的に提供されることが特に効果的・効率的と考えられるサービスの組み合わせも含む).利用者の介護・看護のニーズに対応していくことによって要介護者の在宅生活を支えていくことが期待されています(図9).
(3) 居宅介護支援
居宅の要介護者が,居宅サービス,地域密着型サービス,その他の居宅において日常生活を営むために必要な保険医療サービスや福祉サービスを適切に利用できるよう,当該居宅要介護者の依頼を受けて,その人の心身の状況,置かれている環境,本人および家族の希望等を勘案し,利用するサービス等の種類,内容,担当者,本人の健康上・生活上の問題点,解決すべき課題,サービスの目標およびその達成期間等を定めた計画(居宅サービス計画)を作成し,その計画に基づくサービス提供が確保されるよう,事業者等との連絡調整等の便宜の提供を行うサービスです.また,地域密着型介護老人福祉施設や介護保険施設に入所が必要な場合は,施設への紹介等を行います.このようなサービスを行う事業を「居宅介護支援事業」といい,事業所を「居宅介護支援事業所」と言います.
(4) 居宅介護住宅改修
手すりの取り付け,その他の厚生労働大臣が定める種類の住宅改修費を支給するサービスです.
(5) 施設サービス
介護保険法で規定されている介護老人福祉施設,介護老人保健施設,介護療養型医療施設, 介護医療院に入所している要介護者に対して,介護支援専門員が作成する「施設サービス計画」に基づいて提供されるサービスです.
1) 介護老人福祉施設
老人福祉法第二十条の五に規定する特別養護老人ホーム(入所定員が30人以上であるものに限る)であって,当該特別養護老人ホームに入所する要介護者に対し,施設サービス計画に基づいて,入浴,排せつ,食事等の介護,その他の日常生活上の世話,機能訓練,健康管理,療養上の世話を行うことを目的とする施設です.
2) 介護老人保健施設
要介護者であって,主としてその心身の機能の維持回復を図り,居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し,施設サービス計画に基づいて,看護,医学的管理の下における介護および機能訓練,その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設です.
3) 介護療養型医療施設
療養病床を有する病院または診療所であって,入院する要介護者に対して,施設サービス計画に基づいて,療養上の管理,看護,医学的管理下における介護,その他の世話,機能訓練,その他必要な医療を行うことを目的とする施設です.尚,介護療養型医療施設は,2006(平成18)年の「健康保険法等の一部を改正する法律」において,6年間の経過措置期間を設けて廃止されることになっておりましたが,経過措置期間は2012(平成24)年より6年間, 2018(平成30)年よりさらに6年間延長され,その間に介護医療院等へ順次転換を図ることとされています.
4) 介護医療院
2017(平成29)年の介護保険法改正において創設されたサービスです.要介護者であって,主として長期にわたり療養が必要である者に対し,施設サービス計画に基づいて,療養上の管理,看護,医学的管理の下における介護及び機能訓練,その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設です.
認知症総合支援事業
市区町村が主体となって実施する地域支援事業の包括的支援事業に位置づけられる一事業です.以下の事業によって構成されています.
(1) 認知症初期集中支援推進事業
認知症になっても本人の意思が尊重され,できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けられるように,地域包括支援センター,市区町村本庁,認知症疾患医療センター等に,認知症サポート医である認知症専門医,医療系・介護系職員(保健師,看護師,介護福祉士,社会福祉士,精神保健福祉士等)で構成される認知症初期集中支援チームを配置し,認知症地域支援推進員と連携しながら,認知症の早期の段階から必要な社会的支援を統合的に利用できるように調整することをめざした事業です.
(2) 認知症地域支援・ケア向上事業
地域包括支援センター,市区町村本庁,認知症疾患医療センター等に認知症地域支援推進員を配置し,認知症の容態の変化に応じて必要な医療・介護・生活支援サービスが有機的に連携して利用できるように個別支援や相談業務を行ったり,社会参加活動を推進するための体制整備を進めたり,地域資源のネットワーク形成を促進して地域における支援体制づくりを進めたり,認知症ケアの向上を図ることによって,認知症の人が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるようにすることをめざした事業です.
(3) 認知症サポーター活動促進・地域づくり推進事業
認知症の人ができる限り地域のよい環境で自分らしく暮らし続けられるように,認知症の人やその家族の支援ニーズと認知症サポーターを中心とした支援を繋ぐ仕組みを地域ごとに整備し,「共生」の地域づくりを推進することを目的とした事業です.具体的には,地域包括支援センター,市区町村本庁,認知症疾患医療センター等にチームオレンジコーディネーターを配置し,チームオレンジ(認知症サポーター養成講座やステップアップ講座受講者を中心とするボランティアチーム)を整備し,その活動を支援したり,運営を助言したりすることによって,認知症の人とその家族の支援ニーズをチームオレンジの活動に繋いでいこうとするものです.
(文責 粟田主一)